ヨノワールは脇にあった壷の中からアーボックを掴み出すと
巻きつこうとするアーボックを無理やり引き伸ばしてスライサーに尻尾を当てた。
ざりっと言う音と共に尻尾の先端が薄く細く千切りにされた無残な姿で現れた。
前後に尻尾を動かすと千切りになったアーボックの肉が下の受け皿の上に落ちる。
ぶしゅぅと血が噴出し、刃は血脂でべたべたになるが切れ味は少しも落ちず、
アーボックの叫び声を無視したヨノワールは一定のリズムで手を動かしていく。
アーボックは何度も巻きつこうとするが、透けてしまって無駄な足掻きに終わり、
次々と肉がべちゃっべちゃっと皿に積み重なっていく。
ぐぎゅっと言う音がして肉の中に白いものが交じり始めた。
骨が切れだしたのだ。何でも切れるというキャッチコピーに恥じない切れ味だ。
涙を流し、噛み付こうとするがやはり透けてしまう。
胴体の真ん中辺りまで来たところでぐおおぉぉぉ…という叫び声と共に絶命した。
ヨノワールは何も感じないのか、ただ淡々と千切りを続けていた。
徐々にぶちゅっぐちゃぁという音がしてピンク色の内臓が。
鮮やかな顔のような模様が描かれた部分が赤一色に染まって。
眼球や脳などの頭の部分が。どんどん下の皿へと落ちて積もっていった。
指を切る心配の無いヨノワールは最後の最後まで千切りを続けた後、
血脂で真っ赤に染まったスライサーを持って再び影の中へと消えていった。
少しして戻ってくるとその手には大きな布、すりこぎ、すり鉢が握られていた。
皿の上の千切りになった肉を無造作に鉢の中に放り込むと
ぐしゃぐしゃと擂り潰していった。
完全にすり身になると、布に包んで思いっきり握りつぶして
血や体液などの水分をほとんど搾り出す。
残った搾りかすを布に包んだままこちらへ差し出す。
これを乾かして粉末状にすると金持ちのスポンサーたちが欲しがる精力剤の元となるのだ。
ここの材料屋は活きの良いモノを目の前で材料にしてくれるのだ。
娘はこれが見たかったらしく、目を輝かせて眺めていて、
その横では店主が唯一あげる声、甲高く気味の悪い笑い声を響かせていた。