その途端、断末魔のような叫び声をあげたかと思うと泡を吹き、白目を向いて気を失ってしまった。
研究員はそんな事を気にも留めず、淡々と蠕動する内臓を撮り、メモを取る。
それが終わるとメスを取り出し、無造作に突き刺し、切り裂いた。
途端に跳ね起き、叫び声を上げるが、突如として噴出した種を口いっぱいに詰め込まれ、
その上から蔓を巻かれ、叫び声さえあげられなくなってしまった。
返り血を浴びながら無表情にメスを躍らせる研究員の姿は一種の神々しささえ感じた。
ようやく動きを止めると、ぴくぴくと痙攣する事しか出来なくなったニョロモの小腸をぐっと掴み、一気に引きずり出した。
びくびくびくっと体がはねたかと思うとそのままぐったりと動かなくなった。
「…もう少し感情を顕にして、じっくりやって欲しかったわね。
でも、これはこれですごく良かったと思うわ。鈴もそう思う?」
ポケモンに有用な躾を研究する棟のある部屋では、
拷問の一種である、『ブーツの刑』をアサナンが受けるところだった。
両足は間に二枚の板を挟んでぴったりと揃えられ、股下から足首まで二重の枠で固定されている。
外側の枠は台にしっかりと溶接されているが、内側の枠はある程度は動くようになっている。
しかし、両手首と両足首は革のベルトで台にしっかりと固定されているため、逃げ出すことは出来なかった。
台はスポットライトの様にそこだけが照らされており、普段の間抜けな表情も不安で強張っていた。
ふっと暗闇の中から現れた研究員の手には大きな楔が二つ握られており、
アサナンの顔からは色が抜け、白い肌がより一層青ざめていった。目には涙さえ浮かんでいる。
その手に持った楔を勿体つけるようににやにやと笑いながら足の間の板の隙間に楔を押し込む。
それに圧迫され、足が窮屈になったのか、少し顔を歪めるアサナン。
その顔を笑顔で見ながら手に持った木槌を楔に向かって振り下ろした。
かーん…こーんと大きな音を響かせながら二つの楔が徐々に板の間に押し入っていく。
その楔が完全に板の間に埋まる頃にはアサナンの足は各所で内出血を起こし、毒々しい紫色で斑に染まっていた。
額に汗を浮かべた研究員はアサナンに何事か囁きながら、足を親指でくっと押す。
それだけでも酷い痛みが走るのか、囁きなど簡単にかき消すほどの叫び声をあげる。
先ほどの囁きはどうやらどちらの足を先にするかの提案だった様子。
右足の外側の枠の隙間に二つの楔を打ち込んでいくと斑な紫色が増えていき、
ぱんぱんに張り詰めていた皮膚がばちんと弾けて血が噴出し、肉が顕になった。
喉が潰れそうなほどの叫び声をあげ、痛みを紛らわせるため無理やり動こうとするが、
ベルトに阻まれ、拳を握り締め、頭を振ることしかできない。
左足は右足よりゆっくりと少しずつ楔を打ち込んでいくと、
足が変形し、骨が砕けていく音がこちらまで聞こえてくる様だった。
歯を食いしばり、目を血走らせ、苦悶の表情で涙を流すアサナンの表情には鳥肌が立った。
左足が弾けると足首のベルトを外し、足を持ち上げてアサナンに見せた。
その惨状を見てしまうと、とうとう気絶してしまった。
黙々と楔を打ち込んでいた研究員もさすがに疲れたのか、
返り血と汗に塗れた顔を拭い、ささっと処置を施した後、休憩に入っていった。
「ここは中々良かったわ。鈴もそう思う?でも、気絶する程度の痛みじゃ生温いわね。
中途半端で休憩に入るのも、額に汗して"躾”をするのも、私としては減点対象よ。
…一番の減点はあの笑った顔の醜悪さだけれど…
…あら?そろそろ父様がいらっしゃる時間ね。そろそろ終わりにしましょうか…」
今日の見回りは割りと有意義なものになった。
敬愛する父様にまた一歩近づけたかもしれない。