3日目。昨日は早くあがれたため、昨晩はよく眠れて、「良い夢」も見られた。

気を取り直して、三部屋目に目を移すと壁を睨みつけるサンダースの姿が映った。

怒りのため体から常にバチバチと飛び散り閃く小さな稲妻。

こんな狭い部屋は嫌だとでもいうように来たては壁を壊そうとしていたが、

壊れないことを理解したのか、空腹で動けないのか睨むだけに止まっている。

カメラの方はちらちら見ているが、低い位置から精一杯見下そうとしていた。

風鈴に指示を出してサンダースの動きを封じ、カメラの方に意識を向けさせている隙に、

餌と水にメチルジメトンを混ぜ込み、サンダースの体を落とす。

いきなり落とされたにもかかわらずしっかり受身を取っているあたりはさすがだ。

しかし、何も気づかずに腹立たしげに餌をむさぼる姿で先ほどの称讃は取り消しだな。

体内に取り込まれたジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト。

別名メチルジメトンがじわじわと、だが着実に猛威を振るい始める。

高慢なサンダースの餌入れにぽたりと雫が落ち、電気がばちっと小さな音を立てる。

餌の中に落ちた水滴に怪訝そうな表情をするサンダースの額から、

また一滴の汗が餌に落ちて吸い込まれた。先ほどの水滴は汗だったのだ。

それほど暑くは無いし、暴れてもいないのだが、と小首を傾げていた。(発汗)

気を取り直して食事を続けようとするサンダースの口からだらりと唾液が零れる。

カメラを気にして慌てて啜るが、それでも口を開けば溢れてくる。

サンダースとしては涎を垂らしている姿を見られたくないのだろう。

カメラから見えない位置(隠しカメラからは丸見え)で食事を続けた。(唾液分泌過多)

食事中に急に咳き込む。周りをきょろきょろと見回し、虚空を睨むようにする。

胸の辺りを押さえながら、荒くなった息を整えようとしていた。

空気が薄くなったように感じているのだろう。助けを求めるのか?

しかし、何とも無いと強情にもカメラの方に不敵に笑って見せた。(息苦しさ)

きゅぅと窄まる瞳孔。急激に暗くなる視界。内心驚いているサンダースは、

精一杯威厳を取り繕うため何事も無かったかのように食事を終えた。

食事が済んだ後の習慣で顔を洗う際に、こっそり目元を拭うが

それでも眩しいものを見たときのような瞳は戻る気配が無かった。(縮瞳)

暗くなった世界に足を踏み出すが、そのまま体がぐらりと揺れた。

さらに暗転する視界と、コントロールの利かない自分の体。最初より大きな雷が走る。

どうと倒れこむサンダースは自分の体のおかしさをようやく自覚したようだ。

いや、自覚はしていたが認めたくなかっただけかもしれないな。(眩暈)

ぐるぐると回り歪む世界。倒れた自分を叱咤激励して立ち上がろうとするが上手くいかず、

再び倒れこむ。目を開けていても閉じていてもくらくらする頭は変わらなかった。

そのことも手伝って気持ち悪くなってしまった。それでも人前(カメラ前?)では吐くまいと、

気づかれまいと、必死でむかむかする気持ち悪さを耐え忍んでいた。(吐き気)