4日目。昨日は映像に加えて手料理を作ったため、娘にとても喜んでもらえた。
気分が良いのでさっさと始めよう。
次はブースターだ。ブースターの映るカメラの方へ目を移すと、
相も変わらずブースターは昼寝の真っ最中だった。
周囲は寝息に交じる火の粉で、黒い煙が上がり火種がぶすぶすと燻っていて、
餌入れや水入れも火の粉が当たったため溶けかけてしまっている。
仕方が無いので、血管内に注入することにする。
風鈴がモノフルオール酢酸の入った注射器片手に、
静かにブースターの傍に舞い降り、針を差し込む。
突然の痛みに驚き目を覚ますが、覚醒する頃にはすでに注射も終わり、
風鈴が飛び去った後だった。不思議そうに針の痕を見ていたが、
再び大きな欠伸をすると、眠る体勢になってしまった。
眠るブースターの耳がぴくりと動き、目を覚ます。
眉根を顰め、腹の辺りを擦る。どうやら軽い痛みがあるようだ。
眠りを邪魔されて不快そうにしてはいるが、先ほどのこととは気づいていない。
この鈍感さにはさすがに風鈴と顔を見合わせて呆れかえってしまった。(胃の疼痛)
何の脈絡も無く唐突にブースターが胃の中身を吐き出した。
咳き込みながら吐瀉物が痞えないよう抑えようとはせずに吐き出していく。
寝ぼけていたのか、鼻からも垂らし、痛みと息苦しさに悶えていた。
どうやらこのブースターはこちらが驚かされるほど鈍感のようだ。(嘔吐)
顔は真っ青になり、急激な体調の変化に戸惑うブースター。
青い顔は内面からではなく毒と呼吸の苦しさの影響のみだ。
いまだに瞼が半開きで、混乱したように周りを見渡すブースターがその証拠である。
半開きの口からは吐瀉物がだらしなく垂れたままだ。(チアノーゼ)
間抜けな様相のブースターが前触れも無しにいきなり気絶した。
脳が急激な情報過多によりショートし、強制睡眠に入ったのかと思ったが、
さらに痙攣まで起こしているところを見るとどうやらそうではないようだ。
どんな形であれブースターにとって、睡眠は問題ないのではないだろうか?(癲癇性痙攣)
また唐突に意識を取り戻す。このブースターには驚かされっぱなしだ。
まだ夢の中と現実との区別がついていないのか焦点の定まらない瞳を彷徨わせている。
止まない嘔吐で大変間抜けな状態になっているが、どうやら低血圧の影響のようだ。
うとうとしたような状態のまま混乱して唸っていた。(血圧降下)
立ち上がっているとふらふらしているため、ぺたんと伏せてしまった。
再び、意識を失う。…眠ったのかもしれないが。いまいち掴みどころの無い奴だ。
心臓がゆっくりと拍動し、時折咳き込みつつもどうにかこうにか呼吸も行なっている。
吐瀉物の中で躊躇い無く寝返りが打てるのは鈍感といえども感心させられた。(脈拍の遅れ)
寝顔を見ていてもつまらないので、機器から送信されてくる測定値を眺めていると、
血流がおかしい。心臓の弁膜に異常が発生したようだ。
炎症によって弁膜が正常に機能しなくなり、逆流が起こってしまっているのだ。
そのため酸素が十分に行渡らず、さらに深い眠りへと落ちていってしまった。(心臓障害)
目覚めることの無い深い眠りへと陥っていくブースター。
吐瀉物で汚れてはいるものの、その表情は幸せそうだった。
毒で強制的に生命を落とさせられるというのに…
最後の最後まで呆れさせてくれる奴であった。(意識混濁)