次の実験に取り掛かるとしよう。
プリンの入ったガラスケースは別室のほうに移動させ、
鞄に詰めてきたピッピを取り出し、水をかけてやるとようやく目覚めた。
プリンが死ぬまでの一時間半、ゆっくり休めたことだろう。
ピッピには少しずつ亜砒酸を与える方法をとることにして、ガラスケースの中で生活させることにした。
ガラスケースの中に移すとなれない環境と水をかけられたことで
むっとした表情をしていたが、餌を与えてやると笑顔になった。
…どいつもこいつも食欲に負けるとはいくら特殊な能力を持とうが動物は動物といったところか。
それも下等な。
徐々に亜砒酸がピッピの体を蝕む様子を観察していった。
眠れなくなったようで夜うるさかったため
ガラスケースをがんがん叩いてやったらおびえて静かになった。(不眠)
体の末端部から上ってくる痺れにより動きが緩慢になっているので
指先をペンチでつぶしてやるとそこから流れる血には驚いたようだが痛みは感じないようで
ひどく混乱しているようだった。顔が面白かったため写真を撮ってやったが
全然気づいていないようだった。(多発性神経炎)
胃腸への障害が顕著になってきて腹を押さえて苦しむ様子が見られるようになった。(胃腸炎)
大して餌は食べないようになってしまったので、口に漏斗をあて無理やり餌を流し込んでやる。
すでに十分な量の亜砒酸は体内に取り込まれてあるだろうが面白いので続けてやった。(食欲不振)
糞便は垂れ流し状態になってしまったのでガスマスクをしてから蓋を開けるようにした。
それを見たときのピッピの恥ずかしそうな顔は一見の価値はあった。(下痢)
腎臓にも障害が出てきたらしく蛋白質や血が混じった尿がよく出るようになった。(蛋白尿、血尿、腎臓炎)
肝臓は肥大し、眼は充血し顔は暗紫色に、体のつやがなくなり黄色っぽく見えるようになった。
鏡を目の前においてやると何が動いているのかと不思議そうにしていたが
自分だと気づくと泣き出してしまった。(肝肥大、黄疸)
さらに症状は進行し、周りで起きていることに無関心になり、
ほとんど動かないようになってしまった。(知覚・運動失調)
つまらなくなってあまり見ていなかったが、
ほとんど動かないはずのピッピの体がいきなり妙な方向に曲がりだした。(筋肉の萎縮)
期待を込めて見ていると徐々に動きが弱弱しくなり死に至った。
ガラスケースの中の妙な物体はガラスケースごとプリンの入ったガラスケースの中に入れてやった。
蓋を開けたときに腐った臭いが鼻についたので今後は防腐剤を入れることにしよう。
大きなガラスケースごと二匹の死体と記録を上司に渡すと仕事熱心なのは良いが熱心すぎると言われてしまった。ニコニコしながら聞き流したら不気味そうに行ってしまった。
ちなみに次の日にあった上司の失踪事件には私は関与していない。私は。