Dr.Oの元には男の子が二人と研究員が数人いたがDr.Oは二人と研究員達を追い出してくれた。
Dr.Oにウリムーの入ったガラスケースと記録を渡すと無言でモンスターボールを一つ渡され追い出された。

研究室に戻り、早速モンスターボールから特大サイズのガラスケースの中にポケモンを出してやる。
出てきたのは金属の塊、メタグロスだ。なかなか大きく私の身長よりやや低いぐらいだ。
暴れられると危険なので別室からモニターとマジックハンドを駆使し実験することにした。

あれはどちらかと言えば生物というより金属のため、
“純粋な”科学の実験をすることにする。ただ少々騒がしい実験になりそうだが。

まず濃硝酸(HNO3)と濃塩酸(HCl)の入った水槽を用意し、1:3の割合で混ぜ合わせる。
濃硝酸と濃塩酸は単体で使うと溶け残る金属が出てきてしまうが
この化合物はどんな金属でも溶かすことが出来る。これが王水だ。

王水の入った水槽を、自分がどこにいるのか把握できず不安そうなメタグロスの頭上に設置する。
スポイトを使いじわじわと溶かしていく予定だ。(腐食)

変な臭いに気づき、上を見上げた瞬間に背中と思しき所に少しずつ垂らしてやると、
暴れ逃げ惑い叫び声を上げる。機械でも痛みを感じるのかと改めて驚かされる。
垂らされた箇所からは煙が上がりじわじわと錆びていく様を観察することが出来た。
少しずつ痛みが浸透していくのはさぞかし辛いだろうと微笑を浮かべながら考える。

さびた箇所を良く見ると内部には生き物にある肉のような部分があり、
そこは爛れたようになっていて体液がだらだらと流れ出してきた。
そこを針でつついてやるとびくびくと痙攣させ痛がっていた。(火傷)

剣山を爛れた部分に思いっきり差し込んでやると、
この世のものとは思えない叫び声を上げて壁に体当たりをし始めた。
核でも持ってこなければこの壁は壊れないので安心して記録を続ける。

色々な部分に王水を垂らしていると表面の金属部分が錆びて剥がれ落ちてしまった。
露出した肉のような部分に王水を塗り込んでやると見る見るうちに爛れ、引きつれを起こしてゆく。
メタグロスの苦悶の表情がなんとも言えない。

面白がってそれを繰り返しているとメタグロスは思いもよらぬ行動に出た。
サイコキネシスで水槽を自分とは逆側に傾け始めたのだ。
止める間もなく王水はガラスケースの中に流れ出す。
痛みから逃れたい一心でやったことだったのだろうが結果的には自分の死期を早めただけであった。

しまったという表情をしたメタグロスはすぐに激痛に苛まれることとなった。
必死で王水から逃げ惑うがその甲斐も無く足元から溶け始め、
頭まで浸かるとその巨体は小さくなり消えてしまった。

残ったのは煙と異様な臭いとメタグロスの体液と混ざり合い変質した王水だけであった。

Dr.Oの下に持っていくと満足そうな表情をし、正式に上司の地位に就けてくれた。
あのメタグロスはおそらく試験のためのポケモンだったのだろう。

Dr.Oは前任者に対して真面目すぎると考えていたらしく。私の着任を喜んでくれた。

帰り際にわしの若い頃に似ていると言ったのは聞こえなかったことにする。