三回転んで五回看護師と激突したがお構いなしに突き進んで行く。

ようやくたどり着く頃には肩で息をしていた。

走りすぎて赤っぽくなった顔に満面の笑みを浮かべて扉を開く。

電気のスイッチを入れると、ぶぅん…と音がして点いた。

どうやらまだ電灯関連は取り除かれていないようだ。(院長のど忘r(ry)

「んふふ…出て来い!」

勢いよくボールを投げると光に包まれたミュウが飛び出てきた。

もちろん両親にわがままを言って買ってもらったもので、

危険と言う理由で技は『しっぽをふる』以外忘れさせてある。

可愛らしいリボンが長い尻尾に巻かれていた。

「ふわぁ…ふぅ…みゅぅ?」

大あくびをかました後、綾音の方をちらりと見た。

「みゅぅみゅみゅうみゅみゅう?みゅみゅうみゅぅみゅみゅ。みゅうみゅみゅう!」

「もぅ!何言ってるのか全然わかんないよ!こういうときは…」

口調からは文句を言っていることは分かったが、一応訳してもらうために

ルカリオ(これもわがままで買ってもらえた。)に同時通訳をお願いすることに。

訳「久しぶりに呼び出したと思ったら何ここは?

私にふさわしいものなんて何も無いじゃない。

早く部屋を整えなさい!」

「何よその態度は!そんな風だから嫌いなの!」

ミュウと綾音は額をつき合わせるようにして睨み合っていたが

綾音ははっとした顔をして

「あんたの肩にイトマルがついてるよ。」

そういい残すとすぐに額を離し一目散に別室の中へと駆け込んだ。

ドアを閉める直前にビンを思いっきり投げつけるのは忘れなかった。

「!?みゅみゅみゅみゅ!みゅうみゅみゅうみゅぅ!」

訳「!?どこどこどこ!あたし虫嫌いなのよぉ!」

大きな目をさらに大きくして全身を見回す。

しかしすぐに走り去る綾音に気づく。

「みゅ!みゅぅみゅうみゅー!」訳「あ!騙したわねー!」

不意をつかれたミュウはとりあえずすぐに綾音の後を追うが…

ひゅ〜…がん!ばたん!どん!

がつんと頭に変なものをぶつけられ、鼻先でドアを閉められて鼻もぶつける。

そんな風にされれば誰でも怒る。

怒りに燃えるミュウの横でごん、ごとんと鈍い音がしてビンが着地した。

額と鼻から流血しつつ不思議そうにビンに近寄る。

そこから覗く寒天はミュウにとってレアチーズケーキに見えた。

「みゅう!みゅぅみゅみゅみゅう!」訳「まぁ!あたしこれ大好物なのよ!」

注意書きには目もくれず、寒天を取り出すと勢いよくかぶりついた。

途端に口から流血&あまりの不味さに顔を真っ青にしながら吐き出した。

「み゛ゅう゛っ!みゅみゅう!みゅぅ〜みゅみゅみゅみゅぅみゅぅ…」

訳「まずっ!何よこれ!!痛〜舌かんじゃった…」

そんな愚痴を言われても知ったこっちゃない。まったくもって自分が悪い。

そんなミュウの様子を見て綾音はけらけらと笑っていた。

「あはははっ。食べてる。食べれるわけないのにねー。

あ、ルカリオちゃんはもう戻ってていいよ〜。ありがとね。

ふふっそれにしても面白い。」

笑われていることに気づいたミュウは怒り、

綾音に近寄ろうと立ち上がり…

開けたときに落として割れていたビンの蓋を思い切り踏んづけた。

「み゛ゅ!みゅみゅうぅぅ!」

綾音は腹を抱えて笑い転げている。

「きゃははは。そろそろビンの効果が出てくるかな?」

笑いすぎて浮かんだ目じりの涙を拭いながらそんなことを呟き、

きらきらした瞳をしながらガラスに額を押し付けた。

ミュウは足に刺さったガラス片を取り除き、傷を確かめた。

ざっくりと切れた傷口からは血が溢れ、結構深く切ってしまっているようだ。

「みゅぅ…みゅう?」

気になったのはその傷口の周りが赤茶色くなっていることだった。

気づかないうちに虫にでも刺されたのかと嫌そうに周りを見回す。

大きめのガラスの破片に映る額の傷も同様に赤茶色くなっていた。

足はともかく額の方は痛みよりも痒みのほうが勝り、

傷が抉れ、広がり、血が流れ出すのを完全に無視して掻き毟る。

「みゅう!み゛ゅうぅぅぅぅ!!!」

筋組織に傷がつき切断される。その激痛に耐えかねて叫び声をあげた。

赤茶色く染まった皮膚の周辺には赤い斑点や水疱が出来ている。

「みゅうぅみゅうぅ…」

足の傷口を押さえ尻尾で足の付け根を縛り上げながら額を掻き毟る。

そのたびに水疱がぷつっぷつっと小さな音を立てはじける。

ぎゅうぅと縛ると流れ出る血は弱まるが足からは見る見る血の気が引いていった。