「まずは邪魔な耳を取っちゃおうか。」
耳の付け根に刃が当てられる。
「俺にやらせてくれよ。」「僕にもやらせてくださいよ。」
不良生徒と委員長が同時に声をあげる。
『じゃあ片方ずつ』
「ふふ、普段は対立しているくせにこんなときだけは息があうのね。」
流しで瞼を水洗いしていた女生徒にそう言われて
顔を見合わせ、ばつが悪そうな表情をしていた。
「早くしてくれない?皮剥きが出来ないじゃん。」
果物ナイフを片手に女生徒は言う。台所に立つ主婦のようだ。
…手をかけているのは野菜や果物などではなく血まみれのプリンだが。
その声に二人は気を取り直すと刃物を片手に耳を掴んだ。
「――!!――――!!!」
プリンは声にならない悲鳴を上げ、傷が開くのもかまわず身を捩る。
「それでも抵抗してるつもりか?」
「小学生でももう少しまともなことをしますよ。」
大怪我をしていることを無視して勝手なことを言いながら耳の付け根に刃を当てる。
ぷつんと言う音を立てて耳の端がほんの少しだけ浮き上がり
体の色々な所から吹き出した血によって汚れていた耳が
新たに流れ出した血によってさらに汚れていく。
右耳は不良生徒の持つナイフによって、左耳は委員長の持つカッターによって
それぞれ切り進まれていくおぞましい感覚と激痛にプリンはふるふると震えることしか出来なかった。
不良生徒の方は以外に実直な性格なのかナイフを前後に動かし肉を切り進む。
ナイフが血脂にまみれてもお構いなしで切れ味の悪くなったナイフを無理やり進めていく。
最初は服の衣擦れの音だけだったのが今では筋肉や血管が無理やり引きちぎられる
ぶつ・・みち・・・にちゃぁという音が聞こえてきていた。
かつんと骨に当たったかと思うとふっという息を吐き出すと一気にナイフを引いた。
びきぃっとナイフから伝わる感覚に背筋がぞくぞくと震えていることだろう。
プリンはぶるっと身を震わせ、白目を剥きかけるが激痛により気絶することも適わない。
「手早く片付けただけではつまらないでしょうに。もっと手間隙をかけてですね…」
「うるせえな、俺はこれが好きなんだよ。」
「はぁ…最後くらいは綺麗に飾ってあげても良いと思いません?」
委員長の手元を見ると耳の回りにカッターを滑らせ薄く皮膚を剥いていた。
血にまみれた薄皮を剥かれたことによりいっそうピンク色が際立つ。
耳の先をつまみあげると先から根元まで一気に切り裂いた。その行為を五回ほど繰り返す。
つまんでいた部分を切り取ると皮膚によって繋ぎとめられていた肉は自重に耐え切れず
開いた。五弁の皮膚のピンクと血の紅と血脂の薄黄色で鮮やかに彩られた肉の花びらを持ち、
絡みつく血の色に負けず白く光る骨のめしべを持った美しくも醜悪な花が。
「これくらいはしなければ…ねぇ?素材に失礼でしょう。」
真っ赤に濡れた指で、光を跳ね返す眼鏡を押し上げながら委員長は満足げに微笑む。
華の下に手を差し込むと根元の周囲にぴーっと切込みを入れ、
骨とそれにつながる腱だけを残し丁寧に切り裂いていった。
血まみれの刃物を適当に拭い、ポケットにしまうと、二人はそれぞれの耳に手をかけた。
『せーのっ』
ぶちぶちぃと嫌な音を立てて体から離れる耳。
「――――!?―――――!!!!」
激痛に身をよじるプリンは傷を負った部分に多少の凹凸はあるものの
真ん丸いボールと化してしまっていた。