言い終わるか言い終わらないかのうちに

痛みに悶えていたプリン(だった肉塊)の様子が変わり、

腹部の辺りを中心に徐々に変化を始めた。

膨れ始めたのだ。元々丸かったのが雪だるまのように。

「すっげ…」

「妊婦さんみたい。」

生徒たちは口々に感想を漏らし始めた。

口に指を当て静かにさせると観察を続行した。

膨らんでいるのは腸の辺りのはずだ。

ぐるるぅと腹の鳴る音と共にプリンの動きが早くなる。

顔を歪めているところを見ると腹の中で何かが暴れているような

感覚を味わっているようだ。

腹を押さえようにも手がなければ押さえられない。

転がるとむき出しの筋肉に直接刺激が与えられて

皮膚をびりびりと剥がされているような痛みが走る。

内側からも外側からも与えられる激痛に耐えかねて

さらにごろごろと転がる。

そんなことをすれば体の表面の傷は開き、

腹部が圧迫されて腸もさらに痛むだけだというのに。

「―――――!!!」

プリンは突然びくびくっと痙攣したかと思うと

液体と固体が混ざり合った便を排出した。

排出しきると言うことはなく肛門周辺の筋肉がだらしなく

緩んだような状態になってしまっている。

はらわたを引きずり出されるような感覚は

想像できないほどの激痛を伴う。

その激痛にますます勢いよく転がる。

転がるのにも筋肉を動かすために見ているこちらからは筋肉の動きや、

無理に動かしたために血や膏がぐじゅり…にちゃり…と染み出す様子が

こちらからはよく観察できる。

体から流れる血や膏、涙や鼻水、はたまた排泄物が

水槽の底にすでに3cm程も溜まってしまっていて、

その中を転がるためにどろどろの混合液になり、

それが体中の筋肉や眼球という刺激に敏感な場所へと

染みこみ、塗り込められる嫌悪感と痛みに

さらに転がるという悪循環に完全に陥ってしまっていた。

しかし、徐々にではあるが体の下の方の筋肉の動きが緩慢になりつつある。

それはじわじわと体を上へ上へと伝っていき、

とうとうこちらを向いたままプリンは完全に転がるのをやめた。

プリンの体中には電気が流れたような痺れや痛みが流れているためだ。

それは電磁波をくらったときの反応に似ていて

ポケモンバトルをよく行なっている生徒たちには馴染みの光景ではあったが、

その反応をしているのが肉塊と言うのは

当たり前だが初めて見るようでぞくりと背筋を走るものがあった。

もっともそれが恐怖による震えではないのは彼らの表情を見れば明白であったが。

皆プリンの方を見つめ、その眼は普段からは想像もつかない程の

怪しい光を一様に宿し、狂気に満ちた微笑を湛えた表情で微動だにしないのだ。

行なっていることは別にしてもこの場を見た者はこの表情を見るだけで

言いようのない恐怖に襲われ、腰を抜かすであろうと確信できた。