すでに笑いながら傍観を始めた親子の方向を憎たらしげに見つめながら

目の霞を振り払うためか頭を振った途端、何かが突き刺さったかのように転げ、

苦しそうな唸り声を上げ始めた。頭を前足で抱え込み、

目や口をいっぱいに開き、襲い来る激痛に耐えようとする。(頭痛)

さらに、私の所まで聞こえるほどの大きな腹のなる音が聞こえた。

新たに生じた激しい痛みに、横たわり体を丸めて転げだす。

体中の傷が塞がりかけていたところも開き、地面を血まみれにしながら

ごろごろと転がり続けていた。(腹痛)

転がったことによる三半規管の狂いも手伝って、

ぴくりと動きを止めた途端に体を痙攣させながら胃の中身を吐き出す。

すでに血と土で汚れている毛皮に吐瀉物まで纏わり付かせて、

苦しさと頭と腹の両方から来る激痛を紛らわせるために

先ほどよりは弱々しくなったが、転げまわっている。(嘔吐)

腹の音が先ほどよりも大きくなったかと思うと、

今度は水分が吸収される前のぐずぐずの糞便を撒き散らし始めた。

堪え切れず、溢れ出した涙も手伝って、

地面も毛皮も茶色や褐色などでカラフルに塗装されているかのようだ。

親子はデルビルの一挙一動が面白くて仕方がないのか、

苦痛に悶える度にころころと笑っている。(下痢)

もう、出るものも無くなったのか、体中どろどろにしながら

ほとんど放心状態のデルビルの体がぴくりと動く。

それは徐々に広がり、全身に回ったときにはぶるぶると

震えているような状態になっていた。(痙攣)

閉じることもままならなかった口からは舌はだらりと垂れ、唾液がだらだらと流れ出す中、

はっはっと浅い呼吸を繰り返し、腹部が痙攣とは違う動きで小さく上下することで

かろうじて生きていることを伝えていたが、

それが不規則になり、溺れているような呼吸状態になる。

咳き込みながら、必死で空気を吸い込む顔からは、

痙攣により顔の筋肉が動くため、感情は読み取れないが、

目からは許してくれと懇願の色が見て取れる。(呼吸困難)

とうとう、痙攣も呼吸も収まりつつある頃には、

ゆっくりと目蓋が閉じられた。

親子がすーっと近寄り、汚れていない部分を掴んで脈を確かめるが、

にやりと笑う表情からするとどうやら死んではいないようだ。(昏睡)

二匹の力でデルビルの体はふわりと浮き上がり泉に向かって進んで行く。

中ほどの一番深い辺りでデルビルの体を取り巻いていた青い光が消え去り、

どぼんと水飛沫を立てて沈んでいってしまった。