「ぱちゃああぁぁ!!!」
尻尾ではじけた痛みに身を捩るが本能的に勢いを弱めてしまったらしく
骨までは達してはいなかった。
…とは言っても筋肉の半ばまでは刺さっているようだが。
とにかく、いつまでもそうしている訳にもいかない。
そっとナイフを抜き、傷口を押し広げた。
「―――っ!…ちぃぃ…」
相当な痛みを歯を食いしばって堪え、手を差し入れた。
『自分の体の中に異物が、それも自分の腕が入ってくる感触って
どんな感じなの?やっぱり変な感じ?』
痛みと嫌悪感のみであろうにと娘の台詞に苦笑するが
画面の中のパチリスはいたって真剣だ。
赤々とした肉の中に自分の腕をうずめ掻き回せざるを得ない。
少しでも動かすと激痛が走るが爆発はこの上なく怖い。
半ば麻痺した頭で短い腕をさらに押し込むと
何か硬いものに当たった。
「ぱちぃ…」
少し安心したような表情でつかみ引っ張ろうとするが
なかなか抜けず、それどころか激痛が走る。
力任せに引っ張るとごきゅりと嫌な音がして
腕を引き抜くと多量の血が噴出した。
怯えた顔をしながら恐る恐る手を開くと手の上には
血に塗れた白い骨片が乗っていた。おそらく尻尾の骨の先端であろう。
少し不思議そうにしながらその事実を飲み込めない――
飲み込まない――ようにしている青い顔をしたパチリスの耳に
悪魔の声とも言えるような言葉が飛び込んだ。
『あーあ、自分で骨もいじゃってるよ。』
「―――――っっ!!!」
しばらく蒼白な顔でその骨を見つめていたが声にならない悲鳴をあげた。
嫌悪感に込みあがってくる胃の中身を堪えきれずにぶちまける。
『あ、次のがそろそろだね。10.9.…』
半狂乱の状態に陥るがその耳に無常にも娘の声が入った。
涙と吐瀉物でどろどろになった顔をむっくりおこすと
レントゲン写真を見ながらもう一度傷口に手を差し入れる。
「ちいぃ…ぱちぃぱち…」
今度は先ほどよりも浅い所で手を動かしているようだ。
それほど痛みを感じている風もなく、
恐怖で強張った顔から痛みに歪む様子を読み取れない。
激痛より恐怖と焦りが勝っているのだろう。