3

手の先がつるりとした大豆ほどの大きさの物に触れる。

先ほどより慎重に――それでいて急いで――引っ張り出す。

2

先ほどよりは抵抗感なく引き抜かれた掌に乗ったそれは

元々の金属の光沢を失わず、纏った血糊をぬらぬらと煌かせていた。

1

慌てて放り投げたそれは空中で小さな閃光をひらめかせ

きゅぼんっという音と共に爆発した。

『ぎりぎりセーフだったねぇ。とりあえずはおめでと。

ん〜、尻尾が吹き飛ぶのも見たかったんだけどなぁ。

あ、えっと、次のヒントは冷え性の人にとって冬辛い所だよ。

ちなみに、刃物はちゃんと最後まで使えるようにしてるから。

2個いっぺんに発動するから頑張って探してね。』

先ほどの閃光に眼が眩んでいたが爆発の恐ろしさに

歯をがちがち言わせつつも視線を下へと移した。

「ぱ…ぱち…ぱちぃ……」

視線の先にあるものは――――足だった。

改めてナイフを握り直すと怪我が開かないように

留めている糸に刃を当てた。頭を使ったようだ。

しかし、血脂がべっとりと付いた果物ナイフでは上手く切れはしない。

ナイフで切るのをあきらめたパチリスは和鋏を握ると

糸を出来る限り上へと引っ張りあげた。

同時に縫いとめられた皮膚が引っ張りあげられ、

肉がぎりぎりと締め上げられて苦悶の表情を見せながらも

半透明の糸をしょきり…しょきり…と切っていく。

たまにじゃきりと毛を切ってしまったり、

ぐじゃりという嫌な音と共に肉までを挟みこんでしまったりして

びくんっと震えたりはしているがそれにも歯を食いしばって耐えている。

ようやく糸を切り終え、引っ張った所為もありべろんと皮がめくりあがり、

だらだらと血が流れ出す傷口を、荒い呼吸を整え見つめる。

「…ちぃ…ちぃ………っ!!」

目を閉じて一つ深呼吸をすると目を見開き両足の傷の中に手を突っ込んだ。

「――っ!!――っ!!――ぢい゛い゛いぃぃぃ!!!」

最初は唇を噛み、我慢していたようだが唇から血が流れ始めると、

そうもいかなくなってしまったようで声をあげてしまった。

自分の手で自らの皮膚をめくり、筋肉を掻き分け、神経に触れながら、

懸命に肉の中を探る姿は酷く残酷な喜劇の様に無様で滑稽な姿だった。

手ごたえがあったと見えて引っ張り出した血に塗れた両手には、

梅干の種ほどの爆弾が握られていた。

埋まっていた腕が引き抜かれ、ぽっかりと開いた足の穴からは

真紅の血があふれてはいるが、手前の方は固まりかけており、

それほど酷い出血とはなってはいなかった。

とはいえ、多くの血を失ったと見えて顔は真っ青になってしまっている。

『わぁ、おめでとぉ。今回は早かったから次まで時間があるよ。

今のうちに輸血でもしておいたら?顔真っ青だよ?

こんなに早く死んでもらっても困るしねぇ。』

ぱちぱちと拍手をしながらさらりと酷い台詞を吐く娘。

その言葉に青白い顔をさらに青くしつつふらふらしながら周りを見回す。

その眼に輸血セットが映るが通り過ぎ、視線を彷徨わせた後ようやく見つける。

焦点が合わないほど血を失っているようだ。