満足して一息つき腰を下ろすと力なく垂れ下がる二匹の尻尾が目に入った。
名前の通りプラスとマイナスを模っている。
…一部の体色と頬、尻尾を除けば瓜二つの二匹。
そのうち頬はつい先ほど体から剥離した。
残る違いは耳と手の先と尻尾のみである。
…私の頭には仲の良い二匹を双子にしてやろうという考えが浮かんでいた。
ワゴンから鋏を取り出し耳を揃えると小さく開き耳の端を挟んだ。
再覚醒は嫌だろうがそんなことはお構いなしにゆっくりと切っ先を閉じる。
今までとは違うわずかな痛みだが、
痛みに敏感になってしまったらしく弱々しく目を開けた。
プラスルは耳がナイフでかなり切り裂かれてはいるものの、
辛うじて耳の先端の部分でぶら下がっている状態だ。
それを理解しているのか鋏を進めるときにわずかに震える以外は動かない。
マイナンはつい先ほどぶら下げられたばかりなので
耳が切られていることを知るとそれを止めるために動き、
耳が千切れそうになる痛みにますます暴れるという悪循環にはまっている。
不意にプラスルがぷらっすぅ…と小さくつぶやく。
それを聞いてマイナンは動くのをやめた。
…おそらく動くと痛みが増すだけだと忠告したのだろう。
二匹とも大人しく耳を切られた。
耳が切れ、体が支えを無くして落下する。
床に叩きつけられたものの、体が自由になったのを知るや否や
プラスルは体を起こし私のほうに向かってこようとする。
マイナンは体も起こせず弱弱しく顔を上げ相棒を止めようとするだけだ。
ふいにプラスルの体が傾き倒れ、それを見たマイナンも突っ伏してしまった。
大量の出血と涙を流しすぎたことによる脱水症状で倒れてしまったようだ。
危険な状態にある二匹を抱えるとワゴンから輸血用の点滴セットを二つ取り出す。
(中身は事前に調べた二匹と同じ血液型のプラマイから取らせてもらった。
両手両足を固定した後、麻酔をせずに直接心臓に針を差込み搾り取らせてもらったのだ。
ぷぅ゛ら゛あ゛ぁ゛ま゛い゛ぃ゛ぃ゛と少々騒がしかったがね。
徐々に萎れていく姿は素敵だったよ。)
小さな肩にそれを刺し、もう片方の肩には少量の麻酔薬を混ぜた生理食塩水の点滴を打った。
麻酔が効いたことを確認するとすぐに手術に取り掛かる。
急がないと花の消化が始まってしまうからだ。
今までかかった時間が二時間半。
胃腸の麻酔が切れるまで一時間半しかない。
それが切れれば綺麗な花の毒素の餌食と言うわけだ。