鈴蘭を食べたマイナン…

立ち上がろうとするがよろめき倒れる。
歩けたとしてもふらふらとして足元がおぼつかない。(蹌踉)

無制限に出てくる涎は飲み込むこともままならず
タオルが吸いきれなかった大量の涎はマスクの縁から溢れ出ている。
拭い去っても拭い去っても止まらない涎にあきらめたと見えて、
放置された涎は血で汚れたぱさついた毛を撫でていった。(流涎)

腹痛がひどいらしく顔をしかめ、腹を押さえて転げまわる。
毒による腹痛は想像を絶するものがあるというが…自分で試す気にはならないな。(疝痛)

胃から上ってくるものは口まで出かかるがタオルに押さえられて逆流する。
液状のものは口から涎と共に流れ出しマスクから漏れ出す液体は濁り始めているが、
固形物、半固形物はそうもいかず胃と口元の往復を繰り返している。
…あくまで外から見た限りの情報だがおそらく確かだろう。
おそらく喉は胃酸でぼろぼろになっているはずだ。
大きく頭を前後させると苦しげに鼻から噴き出した。
呼吸をするため、ぶふっごふっと必死になって咳き込んでいた。(嘔吐)

水分が消費されたことによって今まで出て来なかったが、
毒の作用によって蛋白質が多く雑じった尿を排出した。
留まることは無く、ちょろちょろとだが延々と排出された。
止まってもまたすぐに出てくる。
もうすでに羞恥心は消え去ったらしく気持ち良さそうな顔をしていた。(腎炎症状)

先ほどよりずいぶんと苦しそうに腹を押さえる。
必死で我慢しているのか毒によって我慢させられているのか
腹部が膨張し妊婦のような有様だ。(麻痺性イレウス)

イレウスの効果は切れたわけではないだろうがこちらの症状が勝ったのだろうか?
堰を切ったように尻からは中途半端に消化された葉や根らしき物が流れ出し、
汚物でまみれたマイナンの体をさらに汚してゆく。
吐瀉物と尿、液状の便にまみれて生物かどうかすら怪しい姿と化し、
顔を歪めてぐぅぅ…と唸っていた。その臭いはすさまじいものなのだろう。
臭気に刺激され、嘔吐は余計に激しくなってゆく。
鼻からとめどなく汚物が溢れ、口から流れる液体は粘度を増し、
肛門からは茶色く染まってはいるが花びらと判断できるものまで排泄された。
最終的には粘液が鼻、口、肛門からどろどろと流れ出るのみとなった。(下痢)

さすがに水分が消費されすぎたらしく、
唇がかさつき、毛並みもごわついているため、
腹から直接水分を注入させる方法をとることにした。

ドリルを操作し、マイナンに近づけてゆく。自分で操作し、感触を楽しみたいが我慢しよう。
さすがに身の危険を感じたのだろうが、水分が無くなり力の抜けた体では転がることもままならない。
あっさりと腹に突き刺さり、痛みにもだえるが、体を固定していなかったため穴が広がる結果となってしまった。
内臓には達しないよう慎重に進め、ドリルを止めた。目を見開き、荒い呼吸をするマイナンからドリルを抜くと、
穴がぽっかりと開き、赤黒い血を流していた。その中に傷薬入りの水を流し込むと、相当沁みるらしく
む゛ぐうぅぅん゛ん゛ん゛…と呻いていた。
モニターを見ると心拍数は異様な荒れ方をしていた。脈拍は異常に早く、運動直後と言った様子だ。
心電図はいきなり大きく揺れたかと思うと止まりかけたり安定することはまったく無い。(心筋の異常興奮)

呼吸は吐瀉物が詰まって咳き込んでいるときを除けばふぅ…ふぅ…と非常に弱弱しい。(呼吸の浅弱)

手足は末端から徐々に体温の低下が見られ上手く動かせない様子だ。
あきらめたのかだらんとしてほとんど動かさない。
もっとも手首から先は無いので大して変わりはしないが。(四肢厥冷、四肢脱力)

弱弱しかった呼吸がいきなりはっはっと荒くなったかと思うと
震える両腕を喉元にあてがいかはっと声とも息ともつかないものを漏らす。
ひくんひくんと体を震わせた後、逝った。(呼吸困難)

うつろな目を天井にむけ、ぼーっとしたような表情を浮かべていた。
こうしてみるとかなり苦しんだ割には安らかな死に顔をしている。
周りの惨状を見なければ…一応安らかと言えよう。
現世の苦しみから逃れられて今はすごく幸せだろう。
お花畑での涙の再会といったところか?
花畑では駄目だな。トラウマになってしまっているだろうから。
妙なことを考えながらのレポートの書き直しは意外に楽しかったと言えよう。