6日目。今日は先日から用意していた三匹に結果が出ているはずだ。

折角楽しみにしていたのだからゆっくり順々に見ていこうか。

まずは軽い症状しか出ないように調整してきたブラッキーだ。

その性格も手伝って、毒入りの食物を少量しか食べずに我慢してきていた。

そのため、本当に軽い症状しか出ないよう、調整するのが楽だった。

こいつの部屋だけは真っ暗なので、カメラは暗視カメラだ。

照明は特に強度のあるものにしていなかったのが災いして、

暗闇を好むブラッキーが餌入れをぶつけて壊してしまったのだ。

破片は、急遽麻酔薬を空気に混ぜて眠らせ、怪我をしないうちに取り出した。

悪いことをしたものには当然待っているものがある。お仕置きだ。

当の本人()は暗闇の中で精神安定を得、感覚を研ぎ澄まし脱出の方法を考えているようだ。

ちなみに、餌に混ぜていたのはシャワーズと同様クロルピリホス。

しかし、一度に与える量も全体の量も圧倒的に少なくしてある。

眼光鋭く、思案に耽るブラッキーの頭にぼんやりとした霞が掛かるようになる。

ぴんとしていた黒い耳もへたりと下ろされ、小さく溜息をつく。

目もとろんとしていて、眠気は無いようだが疲れが体から力を奪う。

体を振るい、一旦しゃっきりとするもすぐに元の状態に戻ってしまう。(倦怠感)

冷静に原因を考えようとしても疲れで働かない頭ではそれも叶わない。

周りを見渡すと暗闇の中で何かが蠢いているようにも見え、

どこからか叫び声、呼び声、呻き声、囁き声などのコエが聞こえる気もしてくる。

実際にはそんなことは無くただ心の中にもやもやしたものが残るばかりだ。(違和感)

止めど無く溢れる考えに押し流されそうになる弱体化した意思をどうにか持たせ、

頭をぶんぶん振り回すが、余計にくらくらし、痛みも発生する。

最初はずきっとするだけだったが、じわじわと痛みの範囲も大きさも増す。

考え事が出来るほど甘い痛みではなくなりつつある頭を抱えてしまった。(頭痛)

ぐらつく頭でどうにか冷静に分析をすることを試みるが、

考えようとした途端に視界が一瞬暗転する。周りの闇よりもなお暗く冷たいヤミ

その中に落ちかけるが何とか持ち直し、かくんと倒れた首をのろのろと起こす。

その暗視スコープのような目に映るのは安心できる闇だろうか不安なヤミだろうか。(めまい)

細く震える息で頻繁に呼吸しつつ、眉を顰め、目を硬く閉じながら体を丸める。

よく見ると艶やかな黒い前足で胸の辺りをきゅぅっと押さえている。

頭と違い、胸には痛みはないようだが、苦しいのだろう。

堪えるために噛んだ下唇から鮮血が一滴つうっと流れていった。(胸部圧迫感)

ヤミとその中に潜む姿の見えないコエの主がブラッキーの精神力を

少しずつ削り取っていく。痛みを押さえ込み、薄く開けられた瞼の隙間から覗く目は、

虚空を彷徨い、その瞳は恐怖に彩られている。

考えようとしても大きく響く頭の痛みで思考がまとまることは無い。(不安感)