今日は娘が見に来ているため多少派手な効果がある毒草を使うことにする。
残酷な事に慣れてもらって跡を継いでもらいたいということもあるし、
父の仕事を見てもらい感心されたいということもある。
ただ、気分が悪くなったら見なくても良いと言ってある。
見てもらいたい気持ちでいっぱいだが、妻の忘れ形見である以上
宝物のように大切に育ててきていて気分が悪くなったりしたら妻に申し訳が立たないと思っている。
私の一番大切な守るべきものだから私はとにかく娘は幸せになってほしい、
妻のようにさせたくないと強く願っている。

おっと、娘の話はまた今度にしよう。話をしていたら日が暮れてしまう。

今回はザングースを連れてきた。
マタタビで酔わせてあるためさっきからふらふらとしていて壁にがつがつぶつかっている。
少し額に血が滲んでいるが、大した怪我ではないので平気だろう。娘もけらけら笑っているため問題ない。
これからは真剣に行うため娘には別室からモニターを通じて見てもらうことにする。

今回使用するのは最近騒がれているチョウセンアサガオだ。
ヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミン等のアルカロイドを含んでいる。
花はとても綺麗でラッパのような形をしていて観賞用としても生育されている。
蕾はオクラ、根はごぼう、種はゴマのような形をしているため間違えて食べられることが非常に多い。

マスクをし、ザングースを鎖で縛り付け、頭から水をかけると全身の毛を逆立たせて怒りだした。
が、縛ってあるため転がるだけだ。爪で切り裂こうにも鎖で縛られているためつめが削れるだけだった。
毛を逆立たせ、のた打ち回るみっともない姿は、まるで「どろあそび」をしているジグザグマのように見えた。

ふと、娘へのプレゼントにと思い、背中を踏みつけ固定し、尻尾をメスで切り取る。
とたんに暴れだし手元が狂いそうになったが傷をつけてしまっては飾りづらいだろうと
気をつけて周りの肉を切り取った。骨はまだつながってはいたが、
メス以外のものを持ってこなかったので思い切り尻尾を引っ張る。
ずずずという音とザングースの叫び声がこだまする中で
ぐぎぃっという嫌な音と共に尻尾がザングースから離れ、私の手に移動する。
ザングースは必死で振り返り、私を睨みつけ、痛みにもだえている。
尻尾は汚さぬようにと壁際に置いておいた。

早速チョウセンアサガオとトウガの実とマトマの実をすりつぶした大量の粉末を水で溶いたどろどろしたものを
直腸に流し込む。棘のついたすりこぎを肛門に突っ込み栓をして見ると、
腹はプリンのように膨れ上がり、踏みつけると口から妙な音と共に液体を出した。
激痛にもだえている姿はすでに地獄絵図のようだ。これからまだまだ悪化していくが。
肛門からは滲み出る液に赤いものが多量に混じっているのでかなり直腸は傷付いてしまっているのだろう。
ただでさえ敏感な腸内に激辛のものを流し込まれたら…しかも今は傷だらけ。想像を絶するだろうな。

少しして鎖を解いてやると妊婦のような腹を抱え、ふらふらと立ち上がり、肛門のほうに手を伸ばすが、
すりこぎを少しでも動かすと激痛が走るため仕方なくあきらめ、私への怒りに燃え、
空気に向かって「きりさく」を行なっている。
憎しみだけはぎらぎらとたぎらせた目は充血し、瞳孔は広がり、
私に対して行なおうとしている攻撃もまったく見当違いの方向に向かっている。
(散瞳)

そんなに動いていないのに頬を紅潮させ舌を出し、はぁはぁと肩で息をしている。
舌はざらざらになり、口の中はからからになってしまっているようで
見えない目で周りをきょろきょろ見回している。
チョウセンアサガオの粉末のみを溶いた水を離れた所でゆっくりこぼしてやるとさすがに躊躇したようだが、
喉の渇きには勝てなかったらしく飲みにきた。
水の近くに私がいないか腕を振り回し確認して背後に気を使いながら恐る恐る水を舐める。
水を飲むのも一苦労だなと冷笑を浴びせてやる。まぁ、舐めれば症状が酷くなるだけだが。
辛くないと安心し、必死になってべろべろと床を舐め続けていた。
(皮膚の温度の上昇、唾液の分泌能力の低下)

床を舐めていた舌を離したかと思うとすぐに今舐めた水を吐き出す。
胃が水すらも受け付けなくなったようだ。
可哀相に、使い物にならない舌など要らないだろうと
だらしなくぶら下げた舌の根元からメスで切り取り即座に離れる。
暗闇の中でいきなりすさまじい痛みを感じたようで混乱してむやみやたらに腕を振り回している。
爪が引っかかり、少々服の袖が切れてしまったが、怪我は無いのでカメラに向かって手を振って娘を安心させる。
舌から吹き出た血は飲み込むことが出来ないので口から垂れ流しになっている。
口と肛門から血を垂れ流しながら暴れまわる様はまるでスプラッター映画だなと
自分のしたことは棚に上げて感心してしまった。
(胃運動の低下)

さすがに暴れすぎたらしく心臓に手を当てて真っ青な顔で脂汗を流している。
毒が回ってきた所為だと気づいただろうか?
気づいたとしてもすりこぎは抜けないだろうから問題は無いが。
(頻脈)

とうとう幻覚を見出したようで涙を流し、唸り、周りを睨みつけながら爪で空気を切り裂いている。
かなり怯え、恐怖に歪む顔をしているということはおそらく私の幻影が見えているのだろう。
あるいはもっと恐ろしいものでも見えているのだろうか。
そうだとしたら見習わなければ…おっと、口が滑ってしまった。
見ていると目などあるから怖いものが見えるのだと言わんばかりに爪を自分の目に突き刺してしまった。
もう見えていないのだから状況は変わりはしないが、本人は必死なのだろう。
激痛を押さえ込みながら爪を眼孔から引き抜くと爪に目玉がぶら下がってしまって、
ぽっかりと開いた眼孔からは血と体液が混ざり合ったどろどろとした液体が流れ出していた。
(幻覚)

しばらく見ていると発情期の猫のような鳴き声を発し、影を追うというよりめちゃくちゃに腕を振り回しだす。
まるで踊っているように見える。これは死の舞とでも言うのだろうか?
足ががくがくと震えていて足元はふらふらとおぼつかない。遂に倒れてしまった。
(錯乱)

うぁーともうぉーともつかないうわごとを唱えながらぐでーと伸びてしまった。
もう動くことすら辛いだろうが、顔を必死に前方に向け、
冷や汗を流しながらおびえた顔をして必死に這っていく。
その先には光でも見えているのだろうか?
(倦怠感、脱力感)

腹を下にしていたことも手伝ってすりこぎは今にもとび出しそうにしている。
ゆっくりひねりながら抜いていくと腸の壁と汚物、血液が付着し、まだらになったすりこぎが姿を現した。
歯を食いしばりぎりぎりと音を立て、爪を床に突きたて痛みをこらえようとするが
どうあがいても痛みは消えない。爪が全て剥がれても気に留めずに床を引っかき続けたため、
床には赤い縞が何本も何本も走った。すりこぎを全て引き抜くととたんにものすごい量の汚物が噴出した。
お゛あ゛ぁぁぁと声を絞り出しているのは腹痛のためか、苦しさのためか、
直腸の傷に汚物が染みるためかは分からないがおそらく全て当てはまっているだろう。
全て出し切ってもまだ腹は必死になって体から排出を行なおうとしているらしくびくびくとさせていて、
時折体液を申し訳程度に排泄している。
(腹痛(下痢))

臭いと排泄する衝撃が引き金となり、上からも排泄を行なっている。
胃の働きは相当弱まっていたらしく、消化途中の肉が、羽が、鱗が、ひれが次々に出てくる。
見たところ朝ごはんはポッポとコイキングだったようだ。
あまりすっぱい臭いがしないのは胃が働いていない証拠だ。胃液もあまり吐き出さなかった。
(腹痛(嘔吐))

顔は真っ赤になり、熱を出し、呼吸も荒い。
ぜぇひゅぅぜぇひゅぅと喉から音が漏れるので相当乾燥しているのだろう。
激しく咳き込むと血を吐いた。壊れた喉で必死に哀れっぽい声を上げるところを見ると
命乞いをしているのだろう。…どちらにしろもう手遅れだから観察を続ける。
もともと助けるつもりなど毛頭ないがね。
カメラを手にもち涙と鼻水と血と汗と汚物にまみれたぐしゃぐしゃの顔をアップで撮る。
完全にホラーだ。娘のことを思い出し慌ててやめるがもう見てしまっただろう。
八つ当たりで脇腹に蹴りを入れると、こふっと黒っぽい血を吐いて鳴くのをやめた。
(高熱、呼吸の乱れ)

遂に体をびくびくさせ始めた。(痙攣)残り少ない体力をフルに使い、のた打ち回るが、
酸素が少なくなり動きが弱まる。呼吸がまともに出来ていないのだから当然の結果だ。
(呼吸困難)
喉を押さえながら尚も転がろうとするが、いきなりその動きが止まる。
胸を押さえたかと思うとスローモーションのように仰向けに転がった。
その顔はすさまじい顔をしていてなかなか楽しませてくれた。

ザングースの残骸をまとめ、娘のいる部屋に戻り尻尾を渡し感想を尋ねると
何で解毒剤を使わなかったの?といわれてしまい、返答に詰まってしまった。
すると娘は満面の笑みで使わないでくれてありがとう!とっても楽しかったよ、また見せてねと言ってくれた。
やはり私の娘だ。

頭をなでてやると娘は2枚の絵を私に手渡す。
そこには白衣を着た男がぐちゃぐちゃになったザングースらしき肉塊の隣に立ち
笑顔で尻尾を掲げているものと、体液にまみれてぐちゃぐちゃになった恐怖に歪むザングースの顔だった。
すばらしいと褒めてやるとふわっと幸せそうに笑い、嬉しそうにしていた。この子の将来は決まった。

Mタウンに娘を連れて行き、ハブネークの件と娘の意気込みをDr.Oに伝え、
娘を研究員にしてくれないかと頼み込んでみた。
駄目で元々なのだから断られても一向に構わない。
Dr.Oは渋い顔をして口を開く。

Mタウンから帰ってきた次の日にはぶかぶかの白衣を着て私の隣で懸命に薬品名を覚える娘の姿があった。
その首には真新しい
IDカードをぶら下げていた。「研究員見習い」。カードには娘の写真と共にそう書かれていた。