残った数体の中から一番元気なものを選び、その他は放っておいても死に絶えそうなため、
死体と共に別室に運んでおいた。

念のため生きているもの達は別にしたが、余っていた小さなケージの中にぎゅうぎゅうに押し込んだため
一番下のものは押しつぶされ、頭の傷から脳をはみ出させ、目玉をとび出させ、
こんなに長かったのかと思うほどの舌をケージの隙間から垂らしたスプラッターな姿の死体と化している。

中で足だけは動き回っているため、死体直前のポケモンを詰めたとは思えないような、
妙にがたがたと動くケージとなってしまった。

さて、ようやく本番に取り掛かれる。

先ほどの喧騒で傷ついているバネブーは死なない程度の量に調節済みの傷薬のプールに放り込んでおいて
(
相当しみるらしくどこからそんな元気が出たのかと思うほどの叫び声をあげたが。)餌の準備をする。

麻酔は抜いたがまだぐっすりと眠り込んでいる2体の間にガラス板を挟み
1方(真珠を剥ぎ取る際に片耳が取れたのでミミナシ)には餌を、
もう1(頭蓋が見えているのでシロ)には何もせず目覚めるまで放置しておいた。
(ちなみに薬で眠らされている間も足が動き続けているのには驚かされた。)

プールに放り込んだバネブー(先ほどの戦闘で片目を潰されているためカタメ)
タオルで包み荒々しく拭くと、傷の部分に触れる度に小さな叫び声を上げていたが、
ケースに移し多めに用意した餌を与えた途端にご機嫌になって口をつけた。もう回復したらしい。

ちなみに、今回餌に混ぜた毒物はトリカブトをすり身にし、消化吸収されやすくしたものだ。
ジエステルアルカロイド
(アコニチン、メスアコニチン)が含まれ、
舌に乗せるとぴりぴりとするものが特に毒性が高いとされているが、
死と隣り合わせの確かめ方のため今ではほとんどやるものはいない。

ミミナシに与えた餌には多量の、カタメに与えた餌にはごく微量のトリカブトが入っている。

カタメが食べ終える頃にようやく目覚めたミミナシとシロは
自分が置かれた立場が良く分からないようではあるが、ミミナシはすぐに餌に飛びつき、
シロはそれを見て怒り飛び跳ねていた。

ミミナシは幸福そうに食べ終えたときになってようやく
口の辺りを中心に全身が燃えるような感覚に包まれていることに気づいたらしい。
涎がだらしなく流れ、止めたくても止められない。
今まで食べていたものとまったく同じものを食べただけなのにと
戸惑っている感じだ。(口唇や皮膚の灼熱感、流涎)

苦しげに体をよじると先ほど食べたものを吐き出し、ケースの床を汚していく。
見たところ混ぜ込んだトリカブトはすでに十分な量が吸収されたようなので吐き出されても問題は無い。
腹や喉()をびくびくと痙攣させては吐き出している。
トリカブトはすでに吸収されているとは言え念のため吐瀉物に顔を押し付けもう一度飲みこませる。
嚥下しては吐き出すことを何度も何度も繰り返させたため、胃酸で歯はぼろぼろになってしまった。(嘔吐)

足の動かし方というか跳ね方がおかしくなり、
一つのトランポリンの上で数人で跳ねたときのように高低がまちまちになり方向も定まらない。
壁にごつごつと頭をぶつけ、先ほどの傷からは体液を噴出させ、
新しい傷からは血をだらだらと流していた。(歩行困難)

呼吸も荒くぜぇぜぇと苦しそうな息をし、吐瀉物の上に倒れてしまった。
足は痙攣したようにしか動かなくなってしまっていた。
吐瀉物に混ざった胃酸のために体の所々が焼け爛れたようになっているが
そんなことはすでに気にならなくなっているのだろう。(呼吸困難)

遂に呼吸が出来なくなったようで苦しそうに体を震わせている。
見えない手に鼻と口を押さえられているかのようだ。かはっと空気を吐き出して息絶えた。(呼吸中枢の麻痺)

シロはそれを見て怯えると同時に餌を食べなくて良かったとほっとため息をつき、
カタメは自分の体はどうなってしまうのかと不安そうにしていた。

ミミナシの死体から離れようとケースの隅で震えているシロを取り出すと、
小さな腕に注射針を差込みトリカブトから抽出した毒液を直接血管の中に流し込んだ。

注射器を見せるとミミナシのようにならないための薬を注射してくれるのかと勘違いしたらしく、
大人しく腕を出したのには笑みをこらえるのに必死になってしまった。