両目を失ってしまったカタメにはそれまで通り餌を与え続けた。
鼻先につきつけてやるともぐもぐと食べるのだ。
あれだけ痛めつけられ、両目を失っても生きることだけには執着している。
すさまじい生への執着には感服する。
十数日後、カタメ(すでに両目が無いが便宜上こう呼ばせてもらう)にもようやく効いてきたみたいだ。
耳は両方とも切り取られ片方はすっぱりと、もう片方は千切り取られた無残な傷跡を覗かせている。
いくら脂肪の層が厚いといっても丸ごととってしまえば関係ない。骨も見え隠れしている。
止血はしてあるものの痛みは続いているのだろう。時折体をぴくつかせる。
内臓も大して残っておらず、目は見えないにしても
体がだんだんと軽くなっていくことくらいは分かったことだろう。
生きることに最低限必要な程度しか残さなかった。小腸など当初の8分の1ほどしか残っていないほどだ。
体中がぼろぼろになっており、私から見ても死んだほうがましではないかと思えるほどだ。
しかし、しぶとく生きている。こちらとしては好都合だが。
そんな状態のカタメに効いてきたのだから神も残酷なことをするものだと思う。
内臓が抜かれたと言うことだけではなくありえないくらいがりがりにやせ細っている。
肋骨(切除してしまったため4本しかない)が透けて見えるほどだ。(体重減少)
時折固形物の混じった血を吐くので、調べてみると固形物は消化管の上皮が剥離したものだと分かった。
炎症を起こし皮が剥がれたのだった。大腸に水を注ぎ込んで排出させ得られた軟便からも
同様のものが採取された。うめき声も上げられなくなるほど衰弱はしていたが足が動いていたので
かろうじて命を繋ぎとめていることが分かった。(消化管のカタール)
脈も安定しなくなり、時折止まりかけることもあるようになった。
慌ててマッサージしてやると荒く縫われた腹から変なものをはみ出させながら生き返った。(心機能障害)
腕には水ぶくれのようなものが出来、押すとへこんだ。
その1つを切り裂いてみると、どろっとした体液があふれ出てきて腕を伝った。(四肢の冷性浮腫)
血液を採取して病原菌と戦わせて見たところ赤血球が非常に壊れやすくなっていることが判明した。
そのためヘモバルトネラ(猫伝染性貧血)と言う病原菌を伝染させてみることにした。
猫でも抵抗力が弱まったときにしか発症しない。それをバネブー用に改良(改悪?)したものを感染させてみた。
ちなみに強力にはしていない…少ししか。
感染させるとすぐに高熱を出し、貧血を起こした。
血液を採取してみたところほとんどの赤血球が溶血を起こしていた。
ぼろぼろになった体はヘモバルトネラが引き起こす症状に耐え切れずこの世を去った。(赤血球抵抗性の低下)
一部始終を娘と共にバネブーの丸焼きを齧りながら見ていた私は、
研究結果を手早くまとめてDr.Oの元に運んでいくことにした。脂ののった美味しい焼肉を手土産に。